• 2019.01.05

「VR現場教育」の最前線 命を落とす研修はどこまで命を守れるか

かつての建設現場では、作業員の死亡事故は決して珍しいことではなかった。

一緒に仕事をしていた同僚が、ある日突然帰らぬ人となることもあった。

それが各社の安全対策強化が奏功し、労働災害は年々減少。2017年の死亡者数は15年前と比べて半分近くにまで減ったのだ。

だが、近年は労災発生件数の減少傾向が鈍化している。

建設現場の世代交代に伴い、事故が多かった時代を経験していない作業員が増えたことで事故の恐ろしさを改めて知らしめる必要が出てきた。

そうした中、現場教育の一環としてVR(仮想現実)を活用した疑似体験が全国の現場で活用されている。

VRゴーグルを装着すると、上下左右360度の視界がたちまち建設現場へと切り替わり、さながら本当に足場に乗っているような錯覚に陥る。

作業に慣れているはずのベテラン職人でも次々と落下し、安全確認の重要性の再認識に役立っている。

「建設現場で起きる死亡事故の4割は高所から落ちること(墜落)が原因。事故の恐ろしさを学ぶには、座学よりも身をもって体験するほうが有効だ。」

VRを開発した経緯を、準大手ゼネコンである東急建設の土木事業本部技術統括部の伊藤誠グループリーダーは語る。

アミューズメントの切り口で語られることの多いVRだが、労働災害の防止にも活躍する余地は多い。

掲載:東洋経済ONLINE